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【書評】mol(モル) のわかりやすい解説書『マンガ化学式に強くなる』

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このマンガは高校で化学式を習う前に出会いたかったです。

多くの人がサブタイトルにある『さようなら、「モル」アレルギー』を実感できるでしょう。

特にまだこれから「モル 」を習おうとしている高校生諸君はスタバの新作を一回ガマンしたと思ってこの本を買って読むことをお勧めします。

1,000円ちょっとするのでスタバの新作とニューヨークチーズケーキを足したくらいかな…

高校生だけでなく、大人になってしまった方でも化学式を学び直すことで新たな発見があると思います。

普段使わない脳の使い方をすると考え方が変わり、人生も変わるかもしれません。

それではこれがどんなマンガなのか少しだけ紹介します。

モルの概念をマンガでわかりやすく解説

高校で化学を習い始めたときに感じたとっつきにくさ。

特にmok(モル)という概念が出てきたときにつまずいた記憶があります。

そんなときこの一冊があればずいぶん助かったであろうなと思います。

よくこの手の本でマンガは間のページに挿絵的に入っているだけだったりする本がありますが、これはほぼ、全ページマンガで構成されているといってよいです。

とても読みやすく、わかりやすいです。

かといって内容は決して薄くないところが巧みです。

高橋正勝さんの原作を鈴木みそ先生がマンガに

著者は原作を高松正勝さんが書かれており、それを鈴木みそ先生がマンガにしています。

高松正勝さんは東京工業大学の大学院を出たあと帝人(株)プラスチック研究所に勤務、その後教職に転じ、高校の先生になっています。

鈴木みそ先生は僕の場合、ゲーム雑誌の週刊ファミ通でマンガを連載していたことから知っていました。ブログなんかも読んでいたし、書籍もだいたい持っています。

今はマックファンという雑誌でもマンガを連載しています。

幸とお兄さんのラブストーリー?

季節は夏、主人公の女子高校生である幸(さち)がつまらなそうに化学の授業を受けているところから始まります。

幸の友人のお兄さんが理系の大学出身でつくばで研究者をしています。

ちなみにこのお兄さん、最後まで名前が出てきません。なんて名前なんだろう。

友人の誘いでこのお兄さんから化学式について個人レッスンを受けることになります。

基本的にストーリーはこの幸とお兄さんの個人レッスンを中心に進んでいきます。

最初幸は制服姿でこの個人レッスンを受け始めます。

その後、公園、登山、プール、テニスなどに行きながら幸は化学式について学んでいきます。

それはさながらデートのようなもの。

むむ、これはラブストーリなのでは…

そして最後に2人は…

メリハリがあって爽快感のあるタッチの絵

表紙に描かれている主人公の幸は3頭身くらいで描かれていますが本編の中では場面に合わせてコミカルに変化します。

基本的には5頭身くらいです。

プールでのシーンは幸もお兄さんも8頭身で描かれている場面があり、2人とも実はスタイルが良いです。

色々な角度から2人のやりとりが描かれていて、見ていて飽きません。

人物によって描かれているコマもあれば、俯瞰したようなコマもあってメリハリがあります。

それが読んでいる時の爽快感につながっていると思います。

絵のタッチも勢いがあって気持ちよく読み進めることができます。

図解や実験などもおもしろい

このマンガを読んでいて強く思ったのが、化学はマンガととても相性が良いということ。

共有結合は手を繋いだマンガで表現できますし、電子配置の図解もマンガと一緒であると無理なく理解することができます。

自然界ではこんなおもしろいことが起きているんですね。

文章を図解で説明し、それをさらにマンガに落とし込んでいるとても親切な作りに感心します。

実験の様子もマンガで描かれており、とてもわかりやすくなっています。

なんか幸は実験が好きみたいです。しかも危険なやつ…

とても時間をかけて作られたマンガ

このマンガ、何気にとても時間をかけて作られています。

あとがきには次のように書かれています

最後に、マンガを何度も真っ赤に添削して返してくれた原作の高松先生、オリンピックを2回も見られそうなほどの時間を気長に待ってくれ、最後に怒涛のがぶりよりで原稿を持ち帰った編集担当さんに、深くお詫びと感謝の意をささげます。

『マンガ化学式に強くなる』漫画家のあとがきより引用

オリンピックを2回って8年ですよね。

初版が2001年の6月ってなってますから、1993年ごろ描き始めた感じですかね。

世の中的にはバブル崩壊後の景気後退時期です。

そんな中、このマンガは地味に重版を繰り返して売れ続けています。

細く長く売れ続けるマンガ、これが何気にありがたいそうです。

あ、これは鈴木みそ先生がブログでかつてそんな感じのことをおっしゃっていました。

確かにこの本はその内容が今でも全く古くないし、今後もずっと地味に売れ続けるんじゃないかと予測できます。

そう考えると化学を学ぶ価値が見えてきます。

世の中がものすごい勢いで変わっていっても、化学の法則は変わらない。

年月が経過して、変わるものと変わらないもの。

そういえばマンガの絵のタッチが最初の方と最後の方で少し変わっている気が…

マンガで絵のタッチが変わるのはマンガあるあるなのですが、一冊の本でこの年月の経過を感じさせてくれるとは。

そう考えるとこの本の価格、それは冒頭でもいった通り、スタバの新作とニューヨークチーズケーキを合わせたくらいの値段で買えてしまうなんて、安いものですね。